公認会計士とは、国家試験である公認会計士試験に合格した人が就ける専門職で、監査及び会計の専門家です。弁護士が社会正義を実現する「社会生活上の医師」に例えられるように、公認会計士は経済を健全に発展させる「企業組織の医師」と言えるでしょう。
この記事では公認会計士について、仕事内容や資格取得のメリット、公認会計士になる方法を解説します。公認会計士を目指している方、公認会計士とはどのような職業なのか興味がある方はこの記事を参考にしてください。
1.公認会計士とは
公認会計士とは、国家試験である公認会計士試験に合格した人が就ける専門職で、監査及び会計の専門家です。企業決算においては監査役としての役割を担っています。
公認会計士の主な使命は、下記の通りです。
- 財務情報の信頼性の保証
- 公正な事業活動、投資者及び債権者の保護
- 国民経済の健全な発展への寄与
出典:e-gov法令検索「公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号) 第一条」
財務情報の信頼性の保証により、融資や投資を行う人が企業の将来性や倒産リスクなどを判断しやすくなります。公認会計士は、資本市場の維持や発展に欠かせない存在です。
公認会計士は、公正な独立した立場で業務を行うことが求められます。
2.公認会計士の仕事内容
公認会計士は監査業務を独占業務として行える職業です。さらに、専門知識や経験を生かしてさまざまな業務に対応します。
公認会計士の主な仕事内容は、次の3つです。
- 監査業務
- 税務業務
- コンサルティング業務
それぞれの業務について内容を具体的に解説します。
2-1.監査
監査とは、企業が作成した決算書の内容が正しいかどうか、第三者の立場でチェックする業務です。
公認会計士が行う監査は、下記の3つに分類されます。
法律に基づく監査 |
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任意の監査 |
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国際的な監査 |
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監査の種類は、監査対象となる企業によって異なります。
監査業務は、以下のような手順で行われます。
1 | 予備調査 |
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2 | 監査計画の立案 |
3 | 監査手続き |
4 | 監査結果の審査 |
5 | 監査報告書の提出 |
結果の審査は、監査チームとは別の公認会計士が行います。
2-2.税務
税務は税理士の独占業務ですが、公認会計士は試験を受講することなく、研修を受講することで税理士登録が行えます。
主な税務業務の内容は、下記の通りです。
- 税務代理
- 各種税務書類の作成
- 企業再編に伴う税務処理や財務調査
- 税務相談など
公認会計士が税務業務を同時に行うことで、会計に合わせて、企業が支払うべき税金のチェックも行えます。
2-3.コンサルティング
コンサルティング業務では、公認会計士の知識や経験をもとに経営全般に関わるアドバイスを行います。
主な業務内容は、下記の通りです。
- 定量的・定性的なデータに基づく経営戦略の立案
- 企業の人事戦略や組織再編の提案
- 情報システムの構築
- 企業再生計画の策定など
公認会計士には、クライアントとともに企業の将来を考え、経営戦略の実行まで支援する力が求められます。クライアントは、公的機関や民間企業など多岐にわたります。
コンサルティングの種類は、財務・M&A・企業再生などさまざまです。コンサルティング業務を行うには、各分野で生かせるキャリアが必要です。コンサルティングに役立つ中小企業診断士の資格取得を目指す場合、公認会計士資格があれば一部の試験の免除を受けられます。
参考:一般社団法人 中小企業診断協会「中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除」
そのため、公認会計士の中にはダブルライセンスを目指す方もいます。
3.公認会計士になるメリット
公認会計士は、企業経営や経済活動に欠かせない職業であり、重要性に見合ったメリットが複数存在します。公認会計士になるメリットのうち、代表的な3つについて解説します。
3-1.仕事の需要が多く将来性がある
公認会計士の仕事は需要が多く、将来性があることが大きなメリットです。特に監査業務は、公認会計士の独占業務であり、公認会計士以外は担当できません。
また、仕事の応用範囲が広く働き方の自由度も高いことも魅力の1つです。各分野のスペシャリストを目指す人もいれば、積み上げてきた実績を生かしてコンサルタントとして活躍する人もいます。
3-2.将来的に独立を目指せる
公認会計士は、独立して開業することも可能です。将来の独立を視野に入れて、資格取得を目指したり日々の業務で経験を積んだりする人も多く見られます。
公認会計士の独立には、クライアントを集めるための営業活動や、他の公認会計士との差別化を図るためのブランディングが重要となります。
万が一独立に失敗したとしても、公認会計士は専門性が高いため、スムーズに再就職できるでしょう。
3-3.高収入で社会的地位も高い
公認会計士は、専門性が高く需要があるため高収入が期待できます。公認会計士の平均年収は、下記の通りです。ただし、公認会計士のみを扱った年収の公的データがないため、表では「公認会計士・税理士」の平均年収を記載しています。
経験年数 | 平均年収 |
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0年 | 約401万円 |
1~4年 | 約533万円 |
5~9年 | 約559万円 |
10~14年 | 約674万円 |
15年~ | 約811万円 |
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年賃金構造基本統計調査 (職種)第10表 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
※表にはデータの関係上「所定内給与額」が使用されています。所定内給与額とは、きまって支給する現金給与額から超過労働給与額を差し引いた額であり、実際の平均年収はデータより高くなります。
また、公認会計士は社会的地位が高いことも特徴です。公認会計士は、医師・弁護士に並ぶ3大国家資格の1つであり、社会的な尊敬を得やすくなります。
4.公認会計士になるための5つのステップ
公認会計士資格を得る流れは、公認会計士法で次のように定められています。
第三条 公認会計士試験に合格した者(同一の回の公認会計士試験において、第八条に規定する短答式による試験及び論文式による試験の試験科目の全部について、第九条及び第十条の規定により短答式による試験及び論文式による試験を免除された者を含む。第十二条を除き、以下同じ。)であつて、第十五条第一項に規定する業務補助等の期間が二年以上であり、かつ、第十六条第一項に規定する実務補習を修了し同条第七項の規定による内閣総理大臣の確認を受けた者は、公認会計士となる資格を有する。
引用:e-gov法令検索「公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)」/引用日2023/3/7
分かりやすく説明すると、以下のようなステップで公認会計士になれます。
1 | 公認会計士の試験に合格する |
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公認会計士試験には、短答式試験と論文式試験の2つがあります。公認会計士の試験には受験資格がなく、誰でも受験できます。 短答式試験科目は、企業法・管理会計論・監査論・財務会計論の4つです。短答式試験合格者のみ、論文式試験に進むことができます。論文式試験科目は、監査論・租税法・会計学・企業法・選択科目の5つです。 |
出典:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A」
2 | 試験合格後に就職する |
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公認会計士の試験に合格したら、実務経験を積むために監査法人などへ就職または転職します。監査法人の採用活動は、公認会計士の試験に合格した人が対象です。11月に説明会を行い、12~2月には内定して入社研修となるケースがほとんどです。 |
3 | 2年以上実務経験を積む |
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公認会計士登録をするには、監査法人や、監査・財務業務を行う一般企業で業務補助を2年以上行う必要があります。ただし、業務補助の時期は試験合格の前後を問いません。また、「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律」により、実務経験の必要期間が3年に延長されることが予告されています。 |
4 | 実務補習団体にて補習を受ける |
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2年以上の実務経験と並行して、実務補習団体で補習を受講する必要があります。補習の修了に必要な単位や内容は団体への入所年期により異なります。 |
出典:一般財団法人 会計教育研修機構「受講のガイドライン/各種手続 更新情報」
5 | 修了試験に合格する |
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業務補助と実務補習が完了すれば、実務補習団体の卒業試験を受講できます。公認会計士試験と比較すると、合格率が高いことが特徴です。不合格の場合は、翌年に再受験が可能です。合格までの期限はなく、何度でも受けられます。 |
修了試験に合格して要件をすべて満たした人は、公認会計士として登録できます。
まとめ
公認会計士は監査業務を独占業務として行えるほか、税務やコンサルティングといった業務も行います。公認会計士は企業の財務情報の信頼性保証などの使命を持ち、公正な独立した立場で業務を行うことが求められます。
公認会計士は仕事の需要が多く、独立して働くことができ、高収入で医師や弁護士のように社会的地位の高い職業です。公認会計士になるためには、公認会計士試験に合格した後、実務経験を積みながら実務補習を受け、実務補習団体で修了試験に合格する必要があります。