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公認会計士試験の合格率は低い?難しい理由や取得のメリットを解説

2023.03.31
コラム

公認会計士資格は、医師・弁護士と並び、3大国家資格と呼ばれています。公認会計士は高い社会的ステータスを持つ職業ですが、資格の取得難易度は相応に高く、難関国家資格と言えるでしょう。一般的に公認会計士になるためには2~3年間かけて準備を行い、毎日10時間近く勉強する必要があると言われています。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士制度に関する意見」

この記事では公認会計士試験の合格率や、試験難易度が高い理由のほか、公認会計士資格の取得メリットについても解説します。

1.公認会計士試験の合格率は何%?

公認会計士試験の合格率は、試験年度により多少の差はあるものの約10%です。合格者が約10人に1人の難関試験と言えるでしょう。

参考として、公認会計士試験の2019~2022年までの4年間の合格率を含む各数値と、2006~2022年の平均値を下記表で紹介します。

公認会計士試験の年別合格者
試験年度願書提出者
(人)
論文式受験者
(人)
合格者
(人)
論文試験
合格率
合格率
2019年12,5323,7921,33735.3%10.7%
2020年13,2313,7191,33535.9%10.1%
2021年14,1923,9921,36034.1%9.6%
2022年18,7894,0671,45635.8%7.7%
2006~
2022年まで
の平均値
(端数切捨て)
16,2874,8241,78637.0%11.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

近年、公認会計士試験の願書提出者数は増加していますが、一方で合格者数の増加は比較的緩やかであり、結果として合格率は低下傾向にあります。

1-1.年齢・学歴別の合格率

公認会計士試験には受験資格要件がありません。年齢や学歴にかかわりなく、誰でも公認会計士試験の願書を提出して試験を受けられます。

2022年における公認会計士試験の合格者は最高年齢が58歳、最低年齢が17歳でした。下記の表は、公認会計士試験合格者の年齢別での内訳です。

2022年 公認会計士試験の年齢別合格者
年齢願書提出者
(人)
論文式受験者
(人)
合格者
(人)
論文試験
合格率
合格率
20歳未満402362158.3%5.2%
20歳以上
25歳未満
8,9061,95992947.4%10.4%
25歳以上
30歳未満
4,18395833735.2%8.1%
30歳以上
35歳未満
2,14445611725.7%5.5%
35歳以上
40歳未満
1,239262269.9%2.1%
40歳以上
45歳未満
7521651911.5%2.5%
45歳以上
50歳未満
4739755.2%1.1%
50歳以上
55歳未満
2885411.9%0.3%
55歳以上
60歳未満
1913512.9%0.5%
60歳以上
65歳未満
1082300.0%0.0%
65歳以上1032200.0%0.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

合格率は若い年代が高い傾向にあり、中でも「20歳以上25歳未満」は合格者数・合格率ともに最も高くなっています。資格勉強の時間が取りやすい大学在学中に、公認会計士試験を受験する方が多いためでしょう。

また、学歴別の合格率は下記の通りとなっています。

2022年 公認会計士試験の学歴別合格者
学歴願書提出者
(人)
論文式受験者
(人)
合格者(人)論文試験
合格率
合格率
大学院修了9612903913.4%4.1%
会計専門職
大学院修了
690291227.6%3.2%
大学院在学143241354.2%9.1%
会計専門職
大学院在学
165391435.9%8.5%
大学卒業
(短大含む)
7,9231,84163234.3%8.0%
大学在学
(短大含む)
6,5591,22164252.6%9.8%
高校卒業1,8992837626.9%4.0%
その他449781835.8%4.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

学歴による合格率の差はあまり大きくありません。公認会計士試験は学歴による影響を受けにくく、勉強をすれば誰でも合格の可能性のある資格試験と言えます。

2.公認会計士試験の合格率が低い理由

公認会計士試験の合格率が低いのは、試験の難易度が高いためです。公認会計士試験の試験形式は、短答式試験と論文式試験の2段階となっています。

短答式試験は、専門知識の確認を目的とした、マークシート方式による択一式試験です。一方で論文式試験は、受験者の思考力・論述力などの確認を目的とした、記述式試験となっています。短答式試験と論文式試験の両方に合格することで、公認会計士試験には合格できます。

各試験の内容や合格ラインから、公認会計士試験の合格率が低い理由を解説します。

2-1.幅広い範囲から出題される

公認会計士試験の問題が幅広い科目から出題される点が、合格率の低さにつながっています。

公認会計士試験の短答式試験は、下記の4科目から試験問題が出題されます。

試験科目主な出題範囲
財務会計論簿記・財務諸表論
管理会計論原価計算や管理会計のやり方
監査論財務諸表の監査を中心とした理論・制度と実務
企業法会社法全体と商法第1編(総則)・第2編(商行為)

出題範囲が幅広く、試験勉強ですべての範囲を漏れなく対策することは困難です。

さらに、論文式試験の科目数は、会計学・監査論・租税法・企業法に選択科目を加えた計5科目となっています。

参考:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験の出題範囲の要旨について(令和3年6月16日)」

2-2.合格ラインが高く偏った学習が許されない

公認会計士試験は、幅広い出題範囲に対して偏った学習が許されず、難易度が高くなっています。

公認会計士試験の合格基準は、短答式試験が総点数の7割前後、論文式試験が総点数の6割前後です。短答式試験は500点満点中の350点前後、論文式試験は700点満点中の420点前後が、おおよその合格ラインと言ってよいでしょう。

ただし、短答式試験・論文式試験のいずれも、1科目における満点の40%に満たない科目があると不合格になる場合があります。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A」

2-3.科目別の合格がない

科目別の合格がなく、短答式試験受験のたびに4科目の試験内容を勉強しなければならない点が、公認会計士試験の合格率が低い理由です。

国家試験の中には、1つの科目で合格点を取った場合に科目合格と認められ、該当科目の受験が一定期間免除される「科目合格制度」を採用しているものがあります。

しかし、公認会計士試験の短答式試験は科目合格制度が採用されていません。いずれかの科目で高得点を取っていても試験不合格であれば、次回の試験受験時は4科目すべての試験を受験しなおす必要があります。

なお、論文式試験には科目合格制度が採用されています。また、商学・法律学の大学教授や博士号の所有者、税理士など、必要な知識を有していると判断できる方は短答試験の試験科目の一部または全部が免除される場合があります。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験に関するQ&A」

3.公認会計士資格の取得メリットとは

公認会計士試験は出題範囲が広い上に合格ラインが高く、難易度が高い資格試験です。受験者は2~3年かけて試験準備をすることが多く、浪人する方も珍しくありません。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士制度に関する意見」

しかし、公認会計士資格にはさまざまなメリットがあるため、高い難易度であっても資格取得を目指す意義があります。

公認会計士資格の取得メリットを3つ解説します。

3-1.社会的ステータスが高い

公認会計士資格は、外部監査などの「監査」を独占業務とする国家資格です。監査法人や会計事務所など専門性が求められる場所で活躍でき、社会的ステータスが高い職業として知られています。

社会的ステータスが高い公認会計士は、金融機関の信用を得られます。住宅ローン・マイカーローンなどを利用する際に、有利な条件で借入しやすくなるでしょう。

社会的ステータスの高さは、独立開業する際にもメリットになります。金融機関のビジネスローンはもちろん、日本政策金融公庫の融資を受けやすいと言われており、スムーズな資金調達が期待できます。

3-2.無試験で税理士・行政書士登録ができる

公認会計士資格を取得すると、税理士試験・行政書士試験を受験せずに税理士・行政書士登録ができます。税理士法・行政書士法において、公認会計士はそれぞれの士業資格を有すると定められているためです。

第三条 次の各号の一に該当する者は、税理士となる資格を有する。
(中略)
四 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)

引用:e-gov法令検索「税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号 第三条)」/引用日2023/03/07

第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
(中略)
四 公認会計士となる資格を有する者

引用:e-gov法令検索「行政書士法(昭和二十六年法律第四号 第二条)」/引用日2023/03/07

ただし、2017年4月1日以降に公認会計士試験に合格した方が税理士登録をする場合は、財務省令で定める税法に関する研修を受講する必要があります。

公認会計士が税理士登録をすると、会計・税務分野の業務で活躍できます。大企業が主な顧客の監査業務と、中小企業が主な顧客の税務顧問業務をどちらも行えることで、幅広い顧客獲得を獲得できるでしょう。

また、公認会計士が行政書士登録をすると、官公庁への提出書類作成・提出手続代理の業務が行えます。会社経営に必要な手続きのサポートができる行政書士は、企業の会計に携わる公認会計士と相性のよい資格です。

3-3.高収入を得られる

高収入を得られる点も、公認会計士資格を取得するメリットの1つです。公認会計士は専門的な業務が多く、年収が高い傾向にあります。

下記の表は、公認会計士の平均年収を経験年数ごとに区分したデータです。

経験年数平均年収
0年約401万円
1~4年約533万円
5~9年約559万円
10~14年約674万円
15年~約811万円

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和3年賃金構造基本統計調査 (職種)第10表 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

※表にはデータの関係上「所定内給与額」が使用されています。所定内給与額とは、きまって支給する現金給与額から超過労働給与額を差し引いた額であり、実際の平均年収はデータより高くなります。

公認会計士の平均年収は、経験年数が0年でも約401万円と高く、経験年数が15年以上では約811万円です。実際の収入額は勤務先により異なるものの、大手・準大手の監査法人に勤務する公認会計士は年収1,000万円以上を目指せます。

公認会計士の年収は高い?平均年収や年収アップの方法も解説

まとめ

公認会計士試験は、合格者が約10人に1人の難関試験です。受験資格要件がないため、年齢や学歴にかかわりなく、誰でも試験を受けられます。合格者数・合格率ともに20代前半の方が高くなっていますが、学歴による合格率の差はあまり大きくありません。

公認会計士試験の合格率は、試験範囲が幅広い点や、合格ラインが高く偏った学習が許されない点、短答式試験に科目合格制度がない点が理由で低くなっています。

難易度が高い公認会計士試験ですが、取得すれば社会的ステータスを獲得でき、高収入を得やすくなるほか、無試験での税理士・行政書士登録が可能になります。

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