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2023.07.26 [ コラム ]

会計士と公認会計士・米国公認会計士・税理士の違いとは?

会計士と公認会計士・米国公認会計士・税理士の違いとは?

「会計士」と似た言葉には、「公認会計士」「米国公認会計士」「税理士」があります。これらのうち、「公認会計士」と「会計士」は同じ資格および職業を指すのに対し、「米国公認会計士」と「税理士」はそれぞれ独自の資格および職業を示しています。仕事内容や働ける場所、試験の受験要件などが異なるため、これらの資格を目指している方は、違いについて理解しておきましょう。

この記事では会計士と公認会計士・米国公認会計士・税理士について、試験内容や仕事内容などの異なっている点を解説します。

 

1.会計士と公認会計士の違いとは

会計士と公認会計士は同じ職業を指す言葉で、略称であるか正式名称であるかという点を除いて違いはありません。正式名称が公認会計士であり、会計士は公認会計士を省略した呼び方です。

公認会計士の詳しい仕事内容や資格取得の方法などは、下記のページで解説しております。

公認会計士とは?仕事内容や資格取得のメリット・なる方法を解説

以下では公認会計士の使命や業務、給料などを簡単に紹介します。

 

1-1.公認会計士の使命や業務

公認会計士の使命は、公認会計士法の第一条において下記の通りに規定されています。

第一条 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。

第一条の二 公認会計士は、常に品位を保持し、その知識及び技能の修得に努め、独立した立場において公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。

引用:e-gov法令検索「公認会計士法」引用日2023/6/16

条文内の「独立した立場」とは、監査対象となる組織を含め、あらゆる人から独立している中立的な立場を指します。公認会計士は独立性を保持することにより、公共の利益の観点から公正に業務を行えます。

公認会計士が行う業務は、主に下記の3つです。

・監査

財務諸表などの財務書類について内容を検証し、内容が正しいかどうかを判断します。監査業務は公認会計士の独占業務です。

・税務

税務書類の作成や税制利用についての助言、財務調査などを行います。

・コンサルティング

経営戦略の立案や企業再生計画の策定、資金管理についての助言・情報提供など、会社経営にかかわる内容のコンサルティングを行う業務です。

 

1-2.公認会計士の給料

公認会計士の年収を年齢別で紹介すると、下記に示す表の通りです。

なお、賃金構造基本統計調査では「公認会計士、税理士」の区分となっているため、表中の年収には税理士として働いている方の年収も含まれています。

年齢 年収
20~24歳 約475万円
25~29歳 約568万円
30~34歳 約619万円
35~39歳 約723万円
40~44歳 約795万円
45~49歳 約820万円
50~54歳 約868万円
55~59歳 約1,072万円
60~64歳 約599万円
65~69歳 約661万円
70歳~ 約629万円

出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」

公認会計士の年収は、働き始めの20~24歳から年齢を経るごとに上昇している点が特徴です。ピークは55~59歳の約1,072万円であり、60歳以降は定年があるため平均年収は低下します。

ただし、紹介した年収はあくまでも年齢ごとにおける全体のデータです。公認会計士は職場や本人の実務経験・キャリアなどによって働き方が異なり、実際の年収も1人ごとに違いがあります。

 

1-3.公認会計士と非公認会計士の違い

まず、非公認会計士と呼ばれる職業は一般的に存在しません。会計士の業務である監査は公認会計士の資格者のみが行え、資格を持たない方は業務を遂行できないことが理由です。

ただし、金融庁が「非公認会計士」と呼んでいる対象として、監査法人に勤める「特定社員」が存在します。

公認会計士法における特定社員の定義は、下記の通りです。

第一条の三
6 この法律において「特定社員」とは、監査法人の社員のうち、公認会計士及び外国公認会計士(第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)以外の者をいう。

引用:e-gov法令検索「公認会計士法」引用日2023/6/16

特定社員の例としては、ITや経営の専門家が挙げられます。専門性がある知識・経験を持つ特定社員は、監査法人が企業の監査を円滑に実施する上で必要です。

公認会計士法では、特定社員ができる業務を下記のように規定しています。

第三十四条の十の二
4 第二項に規定するもののほか、特定社員は、定款の定めにより監査法人の意思決定に関与し、又は補助者として監査法人の業務に従事することができる。

引用:e-gov法令検索「公認会計士法」引用日2023/6/16

ただし、監査法人に勤める特定社員の割合は無制限に増やせるわけではありません。公認会計士法では、監査法人の社員に占める公認会計士の割合についても規定しています。

第三十四条の四
3 監査法人の社員のうちに公認会計士である社員の占める割合は、百分の五十を下らない内閣府令で定める割合以上でなければならない

引用:e-gov法令検索「公認会計士法」引用日2023/6/16

公認会計士ではない特定社員の割合は、社員の50%未満に抑える必要があります。

 

2.公認会計士と米国公認会計士の違い

米国公認会計士とは、アメリカの公認会計士資格です。国際的に高く評価されているビジネス資格であり、近年は日本においても人気が高まっています。

公認会計士と米国公認会計士の違いを2つの観点から紹介します。

 

2-1.試験内容の違い

公認会計士は日本の資格、米国公認会計士はアメリカの資格であり、資格試験制度にも違いがあります。試験内容の違いは下記の通りです。

  公認会計士 米国公認会計士
受験要件 なし 4年制大学の学位など(州による)
試験内容
  • 短答式試験
  • 論文式試験
  • multiple-choice questions(選択式問題)
  • task-based simulations(総合問題)
  • written communication(論述問題)
科目合格制 論文式試験のみ あり
合格率 7.7%(2022年) 平均51.11%(2022年)

出典:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」

出典:AICPA & CIMA「Find answers to frequently asked questions about the CPA Exam」

出典:AICPA & CIMA「Learn more about CPA Exam scoring and pass rates」

受験要件は、要件がない公認会計士試験よりも、大学の学位などが求められる米国公認会計士試験のほうが厳しいと言えます。

試験内容は単純な比較ができないものの、科目合格制を論文式試験のみで認めている公認会計士試験のほうが難易度は高くなるでしょう。

合格率は、公認会計士試験の7.7%に対して米国公認会計士試験は平均51.11%であり、公認会計士試験のほうが難しい資格です。

ただし、公認会計士試験には受験要件がないのに対し、米国公認会計士試験は学位などの取得が前提になっています。受験者の質を一定以上に保っている点が合格率に影響しているとも考えられるため、必ずしも米国公認会計士試験の難易度が低いとは言えません。

 

2-2.働ける場所の違い

公認会計士と米国公認会計士では、働ける場所に大きな違いがあります。

日本国内では監査業務は公認会計士の独占業務であり、米国公認会計士の資格を持っていても日本で監査業務は行えません。公認会計士は、日本国内で就職・転職したい方に向いている資格です。

米国公認会計士は国際的な資格であり、グローバルに活躍できる点が魅力です。海外に子会社がある企業や、海外企業との取引が多い企業の求人では、米国公認会計士の資格が高く評価されるでしょう。

また、公認会計士と米国公認会計士の資格は両方取得することも可能です。ダブルライセンスを得れば、国内外の双方で活躍できる人材になれます。

 

3.公認会計士と税理士の違い

公認会計士と近しい関係の職種に「税理士」があります。税理士とは、税務に関する専門的な仕事を行う職業です。税務の専門知識を生かして、会計事務所や税理士事務所、コンサルティング会社などで働きます。

公認会計士と税理士の違いを2つ紹介します。

 

3-1.公認会計士と税理士の仕事内容の違い

公認会計士の主な仕事内容は「監査」「税務」「コンサルティング」の3つです。特に監査は、公認会計士の独占業務となっています。

一方、税理士の主な仕事内容は下記の3つです。

・税務代理

確定申告の申請や税務調査の立ち会いなど、税務にかかわる手続きを代理で行います。

・税務書類の作成

確定申告書や年次決算書といった税の申告にかかわる書類を作成します。

・税務相談

税金の悩みや困りごとについて、相談に応じます。

3つの仕事内容はいずれも税理士の独占業務です。ただし、公認会計士は指定の研修を受ければ税理士登録ができ、紹介した3つの税務業務も行えます。

 

3-2.公認会計士と税理士の試験要件の違い

公認会計士と税理士は、どちらも最難関の会計系国家資格と言われています。

2つの資格における試験要件の違いは、下記の通りです。

  公認会計士 税理士
受験要件 なし
  • 社会科学に属する科目を1科目以上履修した大学卒業者
  • 日商簿記検定1級合格者
    など
試験内容
  • 短答式試験
  • 論文式試験
筆記試験
科目合格制 論文式試験のみ あり
合格率 7.7%(2022年) 19.5%(2022年)

出典:公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」

出典:国税庁「税理士試験」

受験要件では、要件の指定がある税理士試験のほうが、公認会計士試験よりも厳しくなっています。しかし、税理士試験には科目合格制があり、時間をかければ試験に合格しやすい特徴があります。一方、公認会計士試験では科目合格制が論文式試験のみに導入されており、合格率は低いです。

また、公認会計士の試験問題は会計・監査・税務・簿記などさまざまな分野から出題されます。試験勉強では幅広い範囲を学習する必要があり、総合的な難易度は高い点が特徴です。

 

まとめ

「会計士」と「公認会計士」は同じ職業を指す言葉で、「会計士」は「公認会計士」の略称です。また、会計士に似た部分が多い資格として、「米国公認会計士」と「税理士」が挙げられます。

米国公認会計士はアメリカの公認会計士資格であり、日本国内での監査業務は行うことができません。また、受験要件や試験の難易度も異なります。なお、公認会計士と米国公認会計士の資格は同時に取得することも可能です。

税理士は、公認会計士と異なり、税務を独占業務とすることができます。ただし、公認会計士は所定の研修を受ければ、資格試験を受けることなく税理士として登録可能です。また、税理士試験は科目合格制度を持つ一方、公認会計士試験は論文式試験以外では科目合格制度が存在しないという特徴があります。

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