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公認会計士の年収は高い?平均年収や年収アップの方法も解説
監査・会計の専門家である公認会計士は、高収入を得られる職業としても知られています。公認会計士の年収は、他職や他の士業に比べても高水準であり、高難易度の資格に見合った収入を期待できます。一方で、より高収入を目指したいと考えている公認会計士の方もいるのではないでしょうか。
この記事では公認会計士の平均年収および、年収をアップさせる5つの方法や、活躍できる職場、将来性についても解説します。公認会計士として期待できる年収を知りたい方や、さらに自分の年収をアップさせたい方は内容を参考にしてください。
目次
1.公認会計士の平均年収は?
公認会計士とは、国家資格の公認会計士資格を保有する監査・会計の専門家です。
公認会計士は企業・各種法人といった組織に対し、独立した立場で監査などの業務を行い、財務情報の信頼性を確保する役割を果たします。
公認会計士のみを扱った年収のデータはないため、公認会計士・税理士の平均月収・賞与・年収を示したデータを下記の表で紹介します。データの計算方法は「(きまって支給する現金給与額のデータ×12)+年間賞与・その他特別給与額(端数切り上げ)」です。
平均月収 | 約45万円 |
---|---|
平均賞与 | 約120万円 |
平均年収 | 約659万円 |
男性の平均年収 | 約691万円 |
女性の平均年収 | 約578万円 |
1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は443万円であり、公認会計士の平均年収は、一般的な給与所得者よりも高水準です。
出典:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査 -調査結果報告-」
公認会計士は男女の年収差があるものの、年収水準は男女ともに高いと言えます。
1-1.【年齢別】公認会計士の年収の上がり方
下記の表は、公認会計士の平均年収を経験年数ごとに区分したデータです。
経験年数 | 平均年収 |
---|---|
0年 | 約401万円 |
1~4年 | 約533万円 |
5~9年 | 約559万円 |
10~14年 | 約674万円 |
15年~ | 約811万円 |
※表にはデータの関係上「所定内給与額」が使用されています。所定内給与額とは、きまって支給する現金給与額から超過労働給与額を差し引いた額であり、実際の平均年収はデータより高くなります。
経験年数0年、つまり資格取得をしたばかりの公認会計士の平均年収は約401万円です。公認会計士は、経験年数を積み重ねるほどに平均年収が高くなる傾向にあります。
1-2.【他職との比較】公認会計士の年収ランキング
公認会計士の年収は、他職と比較して高いか低いかが気になる方は多いでしょう。
下記の表は、公認会計士を含む職業の年収をランキング形式で比較したデータです。
職業別年収ランキング | ||||
---|---|---|---|---|
職種 | 月給 | 賞与 | 年収 | |
1 | 医師 | 約105万円 | 約118万円 | 約1,378万円 |
2 | 航空機操縦士 | 約82万円 | 約91万円 | 約1,072万円 |
3 | 大学教授 (高専含む) | 約66万円 | 約285万円 | 約1,072万円 |
4 | 法務従事者 | 約64万円 | 約174万円 | 約945万円 |
5 | 大学准教授 (高専含む) | 約53万円 | 約215万円 | 約856万円 |
6 | 歯科医師 | 約58万円 | 約86万円 | 約787万円 |
7 | システムコンサル タント・設計者 | 約45万円 | 約196万円 | 約734万円 |
8 | 研究者 | 約45万円 | 約170万円 | 約714万円 |
9 | 小・中学校教員 | 約44万円 | 約165万円 | 約699万円 |
10 | 著述家、記者、 編集者 | 約46万円 | 約144万円 | 約696万円 |
11 | 高等学校教員 | 約44万円 | 約171万円 | 約693万円 |
12 | 公認会計士、 税理士 | 約45万円 | 約120万円 | 約659万円 |
13 | 音楽家、 舞台芸術家 | 約43万円 | 約135万円 | 約647万円 |
14 | 獣医師 | 約43万円 | 約82万円 | 約592万円 |
15 | 薬剤師 | 約40万円 | 約96万円 | 約581万円 |
16 | 診療放射線技師 | 約37万円 | 約100万円 | 約547万円 |
17 | 看護師 | 約34万円 | 約85万円 | 約499万円 |
18 | 臨床検査技師 | 約34万円 | 約91万円 | 約496万円 |
19 | 総合事務員 | 約33万円 | 約103万円 | 約494万円 |
20 | 美術家、写真家、 映像撮影者 | 約34万円 | 約79万円 | 約487万円 |
専門性が高い職業の中でも、公認会計士の年収は比較的高い水準にあります。
また、公認会計士の月給として示されている約45万円は、ランキング中の月給では8位の高さであり、安定した収入を期待できます。
1-3.公認会計士以外の士業の収入は?
士業のうち、特に国家資格を必要とするものは高収入の職業として知られています。公認会計士も国家資格が必要な士業の1つです。
下記の表は、厚生労働省が運営する「職業情報提供サイト(jobtag)」に掲載されている10種類の士業について、それぞれの収入額を示したものです。
なお表中では、jobtag記載の「ハローワーク掲載の無期フルタイム求人の賃金」に12を乗じたものを、各士業の年収としています。
※実際の年収には年間賞与や特別給与が追加されるため、表のデータより高額になります。
士業名 | ハローワーク掲載の無期フルタイム求人の賃金 | 平均賃金に12をかけたもの |
---|---|---|
弁護士 | 約43万円 | 約516万円 |
公認会計士 | 約40万円 | 約480万円 |
弁理士 | 約38万円 | 約456万円 |
税理士 | 約33万円 | 約396万円 |
司法書士 | 約31万円 | 約372万円 |
社会保険労務士 | 約28万円 | 約336万円 |
中小企業診断士 | 約28万円 | 約336万円 |
土地家屋調査士 | 約27万円 | 約324万円 |
行政書士 | 約26万円 | 約312万円 |
不動産鑑定士 | 約26万円 | 約312万円 |
jobtagに掲載されている士業の中でも公認会計士の年収は高く、弁護士に次いで高い額となっています。
2.公認会計士が自分の年収を低く感じるのはなぜ?
公認会計士として働く方の中には、自分の年収が低いと思う方もいます。公認会計士は日本人の平均年収よりも高額な収入を得られるにもかかわらず、なぜ自分の年収を低く感じるのでしょうか。
公認会計士が自分の年収を低く感じる理由と、年収にどのような不満を持ちやすいかを解説します。
2-1.資格取得難易度が高い
公認会計士として働いたときに、年収額が今までの努力と見合っていないと思えることが、年収を低く感じる理由です。公認会計士になる方は、多くの勉強時間を費やして資格試験に合格しています。
公認会計士の資格取得で受験する公認会計士試験は難関試験と言われています。短答式試験と論文式試験の両方に合格する必要があり、どちらの試験も出題範囲が広いためです。
公認会計士試験の合格までにかかる勉強時間は、少ない人でも2,000〜3,000時間、一般的には4,000〜5,000時間が目安とされています。1日に5時間を公認会計士試験の勉強に費やす場合、約2~3年間毎日勉強を続けることになります。
2-2.業務量が多い
企業などの組織に対して監査を行う公認会計士は、繁忙期の業務量が多い職業です。特に企業が上場する前後のタイミングや、四半期や期末の決算期には会計・監査業務が集中するため、激務になりやすい傾向があります。
公認会計士は専門職であり、人手をすぐに増やせないことも、公認会計士1人あたりの業務量が多くなる理由です。
公認会計士が行う監査・会計は、小さなミスも許されない重要な業務です。繁忙期に激務に追われ、精神的なプレッシャーを抱えやすい公認会計士は、業務量の多さや責任の重さに対して年収を低く感じやすくなります。
2-3.今の職場の給与が合っていない
公認会計士はさまざまな職場で活躍できるものの、職場によっては業務の専門性と見合わないほど待遇が悪いケースがあることから、年収を低く感じる場合があります。
待遇が悪い職場の例としては、福利厚生が整っていないケースが挙げられます。扶養手当や住宅手当の支給がなかったり、昇給制度がなかったりする職場では、公認会計士の年収はなかなか上がりません。
また、職場によっては顧客から得られる報酬額が少なく、従業員に支給できる給与額が低くなるケースもあります。
3.公認会計士が年収をアップさせる方法
公認会計士として専門性の高い仕事に見合う収入を得たい方は、年収をアップさせる方法を把握し、実践することが大切です。
公認会計士の年収アップにつながる5つの方法を解説します。
3-1.マネジメント経験を積む
現在の職場で年収アップを目指す場合は、昇進して職位を高める必要があります。職位を高める上で重要なポイントが、マネジメント経験です。公認会計士に求められるマネジメント経験は、主に人的資源の管理・活用です。
一般企業と違う点として、公認会計士が活躍できる監査法人や会計事務所などの職場では、マネージャーという職位が用意されています。マネージャーは、業務の監督やスタッフ管理などを主な仕事内容とする管理職です。
マネジメント経験を積んでマネージャーに昇進することで、年収アップを実現できます。
3-2.関連分野の知識を身につける
公認会計士は監査だけではなく、企業の税務や、経営・財務に関するコンサルティングなどの業務も担えます。関連分野の知識を身につけ、仕事の幅を広げれば、勤務先の利益に貢献でき、年収アップにつながるでしょう。
関連分野の知識を身につける際は、資格取得を目指すことがおすすめです。公認会計士と相性のよい資格としては、税理士資格・行政書士資格・中小企業診断士資格が挙げられます。
税理士は企業の税務を担当したい場合に、行政書士は官公庁提出の書類作成を担当したい場合に必要となる資格です。中小企業診断士は、中小企業の経営コンサルタントとして働く際に重宝します。
3-3.米国公認会計士資格を取得する
公認会計士資格と米国公認会計士(USCPA)資格の両方を取得すれば、活躍の場を広げられ、年収アップを狙えます。
米国公認会計士資格とは、アメリカにおける公認会計士資格です。世界的に認知されている会計士資格であり、国際ビジネス資格の最高峰とされています。
米国公認会計士資格も取得するメリットは、IFRS(国際財務報告基準)に対応できる点です。会計基準をIFRSに合わせる動きが世界的に進む中で、IFRSに対応できることは強みとなります。また、国内の外資系企業や海外の企業で働く際にも、米国公認会計士資格はグローバル人材の証明となってくれるでしょう。
3-4.独立開業する
公認会計士は独立開業することでも年収アップを狙えます。独立開業すると、顧客から得られる報酬がそのまま自分の収入となるためです。
ただし、独立開業時の報酬額は自分の能力と大きく関係しており、必ず年収がアップするわけではありません。独立開業して年収アップを実現するには、公認会計士のキャリアを十分に積み、業務能力を示したり、顧客との信頼関係を築いたりする必要があります。
公認会計士が将来の独立を視野に入れる場合は、中小監査法人で働くのがおすすめです。中小監査法人は大手監査法人と比較して利害関係者が少ないため、会計士の能力を生かした副業などを行いやすく、独立に必要な経験を積みやすいメリットがあります。また、大手監査法人より間接部門が少なく、顧客と直接触れ合って信頼関係を築きやすいのもメリットです。
3-5.転職をする
今よりも待遇のいい職場に転職をすることも、年収アップを実現するための有望な選択肢です。公認会計士は転職市場において需要が高く、給与額・福利厚生の条件がいい職場は数多く存在します。
公認会計士が転職活動をする場合は、今の職場で積み上げた経験・知識を生かせる転職先を探すのがおすすめです。
公認会計士はさまざまな職場で活躍できるものの、求められる役割は職場ごとに違いがあります。公認会計士の独占業務である「監査」を主な仕事内容とする職場であれば、資格の専門性を評価されて年収アップができるでしょう。
4.公認会計士の活躍する主な職場
公認会計士が年収アップする方法の1つである転職では、職場選びが重要となります。転職を検討する方は、公認会計士はどのような職場で活躍できるかを把握し、自分の希望に合った転職先を選べるようにしましょう。
公認会計士の活躍する主な職場を4つ挙げて、それぞれの特徴や仕事内容を解説します。
4-1.監査法人
監査法人とは、企業の依頼を受けて会計監査を実施する法人です。監査だけではなく、企業財務のコンサルティングや、IPO準備企業への支援なども業務としています。
監査法人は「大手監査法人」と「中小監査法人」の2種類に大きく分けられます。大手監査法人は、Big4とも呼ばれる下記の4法人のことです。
- 有限責任あずさ監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- EY新日本有限責任監査法人
- PwCあらた有限責任監査法人
大手監査法人は企業規模が大きく、雇用する公認会計士の基本給が高い傾向にあります。
中小監査法人は大手監査法人よりも基本給は劣る傾向がありますが、マネージャー・パートナーなどへの昇格がしやすく、昇給を期待できる点がメリットです。
4-2.税理士事務所・会計事務所
会計事務所とは、企業や個人の税務顧問となり、顧客の税務申告や経理処理を代行する会社です。コンサルティングやMAS会計処理などのサービスを提供することもあります。
なお、税理士事務所と会計事務所は、名称が異なるだけで意味の違いはありません。
会計事務所で働く公認会計士は、税務関連の業務や巡回監査業務、コンサルティング業務などを担当します。業務をスムーズにこなすためには税理士登録や中小企業診断士資格の取得が必要となるケースもあるでしょう。
会計事務所は企業規模の小さい会社が多いものの、昇給やインセンティブ支給の制度が整っている職場であれば年収アップを狙えます。
4-3.コンサルティング会社
コンサルティング会社は、顧客である企業の経営課題を明らかにし、課題解決のサポートを行う会社です。
コンサルティング会社が提供するコンサルティングサービスは幅広い分野が存在します。公認会計士が活躍できる分野は主に下記の3つです。
財務コンサルティング | 経営資源の管理や財務戦略の提案などを行う |
---|---|
企業再生コンサルティング | 企業再生の計画立案や金融機関との資金繰り交渉などを行う |
戦略系コンサルティング | 課題解決ができる経営戦略の提案・策定などを行う |
コンサルティング会社は給与を高めに設定しているケースが多く、専門知識を有する公認会計士は年収アップがしやすくなっています。
4-4.一般事業会社
一般事業会社においても、公認会計士は活躍できます。一般事業会社で働く公認会計士は企業内会計士と呼ばれ、経営企画や経理・財務、内部監査など会計業務にかかわる部門で働くことがほとんどです。
公認会計士が一般事業会社に転職した場合のポジションは、会社の人事評価制度によって左右されます。監査や会計についての専門知識・業務経験を評価してくれる会社であれば、採用後すぐにマネージャーなどの役職に就けるケースもあるでしょう。
給与・福利厚生などの待遇がよく、公認会計士の資格を生かせるキャリアパスが用意されている場合は、一般事業会社への転職でも年収アップが期待できます。
5.公認会計士の将来性
公認会計士は将来性が高い仕事と言えます。公認会計士が行う監査やコンサルティングといった業務は、企業が円滑な経営・財務を保つ上で欠かせないためです。
特に会計監査は公認会計士の独占業務であり、公認会計士の資格者以外は行えません。公認会計士は、会計監査が義務付けられている大企業や、財務諸表が適正に作成されていることを証明したい中小企業からのニーズがあり、市場価値が高い職業です。
また、公認会計士は税理士法・行政書士法において、それぞれの士業資格を有すると定められており、税理士や司法書士としても登録できる特徴があります。公認会計士と税理士・司法書士のダブルライセンスを取得すれば、監査・税務・コンサルティングと幅広い分野で活躍できるでしょう。
5-1.公認会計士はAIに仕事を奪われる?
公認会計士が行う監査や会計といった業務について、将来的にはAIに仕事を奪われないかが気になる方は多いでしょう。
結論から述べると、公認会計士は企業の財務情報が適正であることを責任を持って証明する立場にあり、AIに仕事を奪われにくい職業です。
決算書の会計処理や、帳簿に記載された数字の照合は、確かにAIであれば素早く正確に行えます。しかし、企業が公認会計士に監査を依頼する理由は、財務情報が適正かどうかを公認会計士に判断してもらうためです。AIがどれだけ優れていても、専門家として責任のある証明は行えません。
むしろ、AIを公認会計士の業務に活用すれば、業務の効率化を進めながら財務内容を精査できるようになります。公認会計士はAIを活用しやすく、恩恵を受けやすい職業と言えます。
まとめ
公認会計士および税理士の平均月収は約45万円、賞与は約120万円、年収は約659万円であり、他の専門性の高い職業や士業と比較しても、公認会計士は高い収入を得られることが分かります。
公認会計士がさらに年収をアップさせるには、マネージャーへの昇格や、業務に関連する資格・米国公認会計士資格の取得以外にも、独立開業や転職などの方法が挙げられます。
また、公認会計士は将来性が高い職業であり、監査法人や税理士事務所、コンサルティング会社、一般事業会社など多岐にわたる職場での活躍が可能です。