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2023.05.01 [ コラム ]

公認会計士の受験資格に制限はある?公認会計士になる方法も解説

公認会計士の受験資格に制限はある?公認会計士になる方法も解説

公認会計士は年収が高く、将来性がある職業です。例年、1万人以上の方が公認会計士試験への願書を提出し、試験にチャレンジしています。公認会計士試験は、医師国家試験や司法試験などと異なり、受験資格に制限がないという特徴があります。ただし、難易度は高く、合格は簡単ではありません。

この記事では公認会計士試験の受験資格や難易度、経歴に応じた試験免除制度、資格取得までにかかる年数、試験勉強のコツについて解説します。

1.公認会計士に受験資格の制限はない

公認会計士は受験資格の制限がない国家資格です。年齢・性別・学歴・国籍を問わず、誰でも公認会計士の資格試験に挑むことができます。

公認会計士試験においては受験資格に制限はない。

引用:公認会計士審査会「改正公認会計士法における公認会計士試験の実施について」/引用日2023/4/4

同じ国家資格試験でも、医師国家試験や司法試験、税理士試験などには、学歴などの資格要件があります。ほかの国家試験と比べても、公認会計士試験は多くの人がチャレンジしやすい資格と言えるでしょう。

高卒者や大学在学中の人が公認会計士試験に合格するケースも多く、幅広い年代やさまざまな経歴の人が資格保有者となっています。

2.公認会計士試験の難易度は高い?学歴や年齢での足切りはある?

公認会計士試験は、受験自体のハードルは低いものの、試験は高難易度です。合格率は決して高くなく、2006年から2022年までの平均合格率は約11.0%となっています。

試験年度 合格率
2019年 10.7%
2020年 10.1%
2021年 9.6%
2022年 7.7%
2006~2022年までの平均値(端数切捨て) 11.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

合格率から見て取れるように公認会計士試験は簡単な試験ではありません。きちんと試験対策を行って挑むことが大切です。

2-1.公認会計士試験は学歴に関係なく合格できる

公認会計士試験の合否に、学歴は関係ありません。最終学歴が高校卒業の方であっても、一定数が試験に合格しています。試験に合格できれば公認会計士という社会的地位を得られるため、学歴コンプレックスを払拭しやすい点も、公認会計士試験を受験するメリットです。

ただし、勉強に専念しやすい在学中に、公認会計士試験に合格する人が多い傾向があります。令和4年度の公認会計士試験では、大学や大学院に在学中の人の合格率が最も高いです。

令和4年 公認会計士試験の学歴別合格者
学歴 合格率
大学院修了 4.1%
会計専門職大学院修了 3.2%
大学院在学 9.1%
会計専門職大学院在学 8.5%
大学卒業(短大含む) 8.0%
大学在学(短大含む) 9.8%
高校卒業 4.0%
その他 4.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

2-2.公認会計士試験は年齢に関係なく合格できる

公認会計士試験は年齢に関係なく合格できる国家試験です。実際に公認会計士試験の合格者の年齢層は幅広く、令和4年合格者の最高年齢は58歳、最低年齢は17歳です。

ただし、受験者に多いのは20歳以上30歳未満の20代で、合格率も20代が高くなっています。

令和4年 公認会計士試験の年齢別合格者
年齢 願書提出者(人) 合格率
20歳未満 4025.2%
20歳以上25歳未満 8,90610.4%
25歳以上30歳未満 4,1838.1%
30歳以上35歳未満 2,1445.5%
35歳以上40歳未満 1,2392.1%
40歳以上45歳未満 7522.5%
45歳以上50歳未満 4731.1%
50歳以上55歳未満 2880.3%
55歳以上60歳未満 1910.5%
60歳以上65歳未満 1080.0%
65歳以上 1030.0%

出典:公認会計士・監査審査会「令和4年公認会計士試験合格者調」

また、試験合格後に就職活動を行うときには、若い年代の合格者のほうが有利です。公認会計士として活躍したいのであれば、20代の内に試験合格を目指すのがよいでしょう。

2-3.公認会計士試験が難しい理由

公認会計士試験が難関試験と言われる理由としては、以下の2点が挙げられます。

幅広い試験範囲から出題される

公認会計士試験の出題範囲は幅広く、短答式試験の場合は総点数の70%、論文式試験の場合は総点数の60%が合格基準と定められています。

また、短答式試験に合格した上で、論文式試験合格者となる必要があります。短答式試験は大きく分けて会社法・管理会計論・監査論・財務会計論の4科目で構成されています。論文式試験は、会計学(務会計論+管理会計論)・監査論・企業法・租税法および選択科目1つの合計5科目です。

それぞれの科目で合格基準を満たさなければならないため、高難易度と言えるでしょう。

参考:公認会計士・監査審査会「合格基準について」

参考:公認会計士・監査審査会「令和5年公認会計士試験の出題範囲の要旨について」

科目別合格がなく偏った勉強が許されない

公認会計士試験の短答式試験では科目別合格(一部試験免除制度)がありません。さらに、1科目でも満点の40%に満たないものがあった場合は不合格となってしまうため、偏った勉強が許されません。

ただし、論文式試験では科目別合格制度があり、公認会計士・監査審査会が相当と認める成績を得ていれば、合否発表の日から2年間は合格した試験を免除されます。

参考:公認会計士・監査審査会「合格基準について」

出典:金融庁「公認会計士試験に関するQ&A」

3.経歴によって一部の試験が免除されることはある

公認会計士試験では、短答式試験と論文式試験のそれぞれに試験が免除となる要件があります。公認会計士試験の勉強を効率良く進めるために、自分が免除対象になるかを確認することが大切です。

短答式試験が免除される代表的な要件は以下の通りです。

【短答式試験が免除される代表的な要件】

大学などにおいて3年以上、商学または法律学関連の教授または准教授だった者 全部科目免除
大学などにおいて、商学または法律学関連の博士の学位を授与された者 全部科目免除
司法科あるいは行政科の高等試験本試験に合格した者 全部科目免除
司法試験または旧司法試験第2次試験に合格した者 全部科目免除
税理士資格保有者 財務会計論免除
税理士試験の簿記論および財務諸表論の2科目で満点の60%以上の成績を得た者 財務会計論免除
上場会社、大会社、国、地方公共団体などで、会計・監査に関する事務・業務に従事した期間が通算7年以上である者 財務会計論免除

出典:金融庁「公認会計士試験に関するQ&A」

論文式試験が免除される代表的な要件は以下の通りです。

【論文式試験が免除される代表的な要件】

大学などにおいて3年以上、商学の教授または准教授だった者、あるいは商学に関する科目で博士の学位を持つ者 会計学・経営学免除
大学などにおいて3年以上、法律学関連の教授または准教授だった者、あるいは法律学に関する科目で博士の学位を持つ者 企業法・民法免除
大学などにおいて3年以上、経済学関連の教授または准教授だった者、あるいは経済学に関する科目で博士の学位を持つ者 経済学免除
司法試験合格者 企業法・民法免除
税理士資格の保有者(弁護士を除く) 租税法免除
高等試験本試験の合格者 合格科目による

出典:金融庁「公認会計士試験に関するQ&A」

ただし、これらの免除を受けるためには、免除の対象となる資格や経歴を保持していることを示す書類を用意し、受験の出願と同時に申請する必要があります。

4.公認会計士になるには何年かかる?資格取得までの流れを解説

公認会計士試験を受験する場合、一般的に2~3年間は勉強を続ける方が多く、ほぼ毎日10時間近くを受験勉強に費やす人もいます。

参考:公認会計士・監査審査会「公認会計士制度に関する意見」

また、公認会計士試験突破を果たしても、すぐに公認会計士になれるわけではありません。勉強期間を含めれば、公認会計士になるためには最低でも5年をかけ、以下のようなステップを踏む必要があります。

【公認会計士になるためのステップと必要な期間】

ステップ 必要な期間
1 短答式試験に合格する1~2年
2 論文式試験に合格する1~2年
3
(平行可)
実務経験を積む2年または3年
実務補習を受講し修了試験に合格する3年
4 公認会計士として認められる合計5~7年

公認会計士になるために必要なそれぞれのステップについて詳しく解説します。

4-1.短答式試験に合格する(1~2年)

短答式試験は、公認会計士に関する基礎的な知識を理解しているかを確認する試験です。

短答式試験は会社法・管理会計論・監査論・財務会計論の4科目で構成されており、それぞれ総点数の70%が合格の基準点となります。

一般的に、短答式試験の科目ごとに必要となる勉強時間の目安は以下と言われています。

試験科目 必要とされる勉強時間
会社法約300時間
管理会計論約310時間
監査論約170時間
財務会計論約750時間

財務会計論は計算と理論があり、どちらも範囲が広いため、4つの科目の中では特に勉強時間が必要となる科目です。一方で、配点が高く、公認会計士の仕事のベースとなる分野であり、得意科目と言えるほど勉強すれば合格率を高めやすいでしょう。

4-2.論文式試験に合格する(1~2年)

論文式試験は、会計学(財務会計論+管理会計論)・監査論・企業法・租税法および選択科目1つの合計5科目で構成されています。

一般的に、論文式試験の科目ごとに必要となる勉強時間の目安は以下と言われています。

試験科目 必要とされる勉強時間
会計学(財務会計論)約265時間
会計学(管理会計論)約125時間
監査論約135時間
企業法約185時間
租税法約330時間
選択科目(例:経営学)約180時間

選択科目は選択する科目によって必要となる勉強時間が変わるため注意が必要です。

また、短答式試験合格者となった場合、短答式試験の受験が2年間免除されます。

Q62.短答式試験に合格し、論文式試験では不合格となった場合、翌年も短答式試験から受験する必要がありますか?

A.短答式試験に合格した者は、その申請により、当該短答式試験に係る合格発表の日から起算して2年を経過する日までに行われる短答式試験の免除を受けることができます。

引用:金融庁「公認会計士試験に関するQ&A」/引用日2023/4/5

くわえて、論文式試験には科目別合格も存在するため、複数年をかけて論文式試験に挑む方もいます。

Q63.論文式試験で不合格になりましたが、「公認会計士試験論文式試験一部科目免除資格通知書」が送られてきました。これについて、教えてください。

A. 論文式試験の試験科目のうちの一部の科目について、公認会計士・監査審査会が相当と認める成績を得た者に対しては、「公認会計士試験論文式試験一部科目免除資格通知書」を交付します。当該科目については、受験願書提出時に免除申請を行うことにより、合格発表の日から起算して2年を経過する日までに行われる論文式試験の当該科目の試験の免除を受けることができます。

引用:金融庁「公認会計士試験に関するQ&A」/引用日2023/4/5

4-3.実務経験を積む(2年または3年)

公認会計士として働くためには、公認会計士試験に合格した上で、2年間(2023年5月18日以降は3年間)の実務要件を満たさなければなりません。一般的な就職先は「監査法人(公認会計士が集まった会社)」であり、会社員として働く中で要件を満たすケースが多くなっています。

公認会計士になるために必要な「実務経験」とみなされるのは、主に「業務補助」と「実務従事」の2種類です。業務補助は監査証明業務について公認会計士または監査法人を補助する仕事であり、実務従事は財務に関する監査・分析を行う仕事となっています。

また、2023年5月18日以降は、法改正により必要な実務要件が3年となるため注意が必要です。

出典:金融庁「業務補助等の期間の見直しにかかるQ&A」

出典:参議院「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案 議案情報」

4-4.実務補習を受講し修了試験に合格する(3年)

公認会計士になるためには、実務補習所に3年間通って単位を取得し、修了試験に合格しなければなりません。そのため、公認会計士になるための要件をすべて満たすには、公認会計士試験に合格後、最低3年かかることになります。

実務補習は、実務経験と並行して受講することが可能です。修了試験は実務補習所の卒業試験と呼べるものであり、年1回実施されます。合格率は50~60%程度と比較的高く、再受験も可能な点が特徴です。

出典:金融庁「公認会計士試験制度及び実務補習の概要について」

出典:日本公認会計士協会「令和3年度(2021 年度)修了考査の合格発表について」

5.公認会計士になるメリット

公認会計士になるためには、試験合格前だけでなく合格後にも長い期間が必要であり、高いハードルを越えなくてはなりません。一方で公認会計士には、難易度の高さにふさわしいメリットがあります。

公認会計士になった後に得られる、代表的なメリットを3つ紹介します。

5-1.年収が高い

公認会計士は資格の取得難易度に見合った、高収入を得られる職業です。

公認会計士の平均月収は約45万円、平均年収は約659万円となっており、一般的な会社員の収入を大きく上回っていると言えます。

平均月収 約45万円
平均賞与 約120万円
平均年収 約659万円

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」

また、経験を重ねた40代以降の人であれば、年収は1,000万円を超えるケースもあります。

5-2.将来性がある

自身の経験・スキル・目標などに応じて、他社の経営に関わったり、自分で起業したりできる点において、公認会計士は将来性が高い職業と言えます。

公認会計士は、会計を軸とした、専門性の高いさまざまな知識・スキルを持った職業です。そのため非常に柔軟性があり、監査法人や税理士、コンサルティングなど、多くの業界・分野において活躍の場がある点が大きなメリットです。

また、人間の判断が必要な業務が多く、AIによって仕事が代替されにくい点も魅力です。

5-3.税理士・行政書士としても活躍できる

公認会計士は、税理士・行政書士資格に必要な試験が免除されます。税理士や行政書士になるために必要な知識が、公認会計士資格試験の内容に含まれているためです。

例えば、税理士になるにあたって、公認会計士は税理士試験の全科目が免除されます。加えて、税理士試験合格者などに求められる2年間の実務経験も不要です。税法に関する所定の研修が修了すれば、公認会計士は税理士登録が可能になります。

出典:e-gov法令検索「税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号 第三条)」

行政書士も同様に試験免除が可能であり、行政書士会への登録・入会を行えば資格を取得できます。

出典:e-gov法令検索「行政書士法(昭和二十六年法律第四号 第二条)」

公認会計士の免除制度を活用することで、ダブルライセンスを取得しやすい点もメリットです。

6.公認会計士試験に合格する方法

難易度が高い公認会計士試験に合格するためには、きちんと計画を立てて長期間勉強を行う必要があります。いくつかのポイントを守ることで、合格率を上げやすくなるでしょう。

公認会計士試験に合格する方法として代表的なものを4つ紹介します。

6-1.勉強時間を確保する

公認会計士は、試験勉強に膨大な時間がかかることが前提となる資格です。コツコツと継続的に努力を重ねた人が結果を出しやすい試験とも言えます。そのため、毎日の勉強時間をしっかりと確保することが大切です。

公認会計士になるために必要な勉強時間は1日あたり5~10時間程度とも言われており、それを1~3年継続する必要があります。社会人として働きながら公認会計士資格取得者を目指している人の場合、あらかじめ3年かけて合格することを目標に勉強するケースもあります。

目標年数を踏まえたスケジューリングを行い、時間を確保して継続的に勉強に取り組むことが、公認会計士試験合格のための近道と言えるでしょう。

6-2.予備校や通信講座を利用して勉強する

公認会計士試験に独学で挑むことは可能です。しかし、予備校や通信講座を利用したほうが公認会計士試験に合格しやすい傾向があります。

予備校や通信講座を利用する場合、教材が充実している点や、短期合格のためのスケジュールを立ててもらえる点が大きなメリットです。試験本番を想定した答案練習を受けることで、知識のアウトプットの練習もできます。また、予備校で勉強仲間ができればモチベーションアップにもつながるでしょう。

独学で勉強する場合の注意点や勉強のコツは、以下の記事を参考にしてください。

独学でも公認会計士試験に合格できる?独学のメリットと勉強法を解説

6-3.最新の法改正に対応したテキストを使う

最新の法改正に対応したテキストを使わなければ、せっかく勉強しても、法改正前の知識で回答した場合は貴重な1点を失う恐れがあります。

法改正は、公認会計士試験の試験を勉強する上で間違いやすい要素の1つです。改正された法律の内容は公認会計士試験の試験範囲にも反映されるため、毎年知識をアップデートする必要があります。

予備校や通信講座では法改正に対応したテキストが提供されるため、自分で法改正の内容を把握する必要がありません。この点も予備校を利用するメリットです。

6-4.答練(答案練習会)や模試に積極参加する

公認会計士試験に合格するためには、知識のインプットだけではなく、試験におけるアウトプットも重要です。そのため、答練(答案練習会)や模試に積極的に参加することが大切です。

答練や模試に参加することで、勉強に対する短期的な目標ができ、モチベーションアップにつながります。また、答練や模試の結果から、自分の現状と目標との差を把握できれば、具体的な対応策や勉強法を考えやすくなるでしょう。

まとめ

公認会計士試験には受験資格の制限がなく、年齢・性別・学歴・国籍を問わず、誰でも公認会計士の資格試験に挑めます。ただし、試験の出題範囲が幅広く、短答式試験の科目別合格がないため、公認会計士試験は高難易度です。

また、試験に合格してもすぐに公認会計士にはなれず、実務経験および実務補習修了試験に合格する必要があります。そのため、公認会計士になるためには勉強時間を含めて5年程度かかります。

公認会計士試験に合格するためには、勉強時間を確保した上で、予備校などで勉強することがおすすめです。予備校では最新の法改正に対応したテキストで勉強でき、勉強のスケジュールなども立ててもらえます。

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