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東証の上場区分は?旧市場区分と上場基準も解説
東証には市場が複数あり、上場を目指す場合、どの市場に参入すればよいのか分からないこともあるでしょう。市場ごとに上場基準も異なっており、上場するためのハードルは大きく異なります。上場には、あらかじめ上場の基準を知り、自社に合った市場を選ぶことが大切です。
当記事では、東証の上場区分とそれぞれの上場基準について詳しく解説します。企業が上場するメリットにも触れるため、上場を検討している企業の方はぜひ当記事を参考にしてください。
目次
1.東証の上場区分とは?
東証の上場区分は、市場再編によりプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つに分かれました。市場が分かれた理由は、市場のコンセプトをはっきりさせ、投資家にとっての利便性を高めるためです。
ここからは、東証の上場区分の分け方や、それぞれの市場の詳細について解説します。
1-1.プライム市場
プライム市場は、東証の上場区分の中で最も上位に位置する市場です。株価の時価総額が大きく、高いガバナンス水準の企業を中心にした市場で、厳しい水準をクリアしないと上場できません。
プライム市場に上場するには、株主数800人以上・流通株式数2万単位以上が必要です。純資産は50億円以上で、財政状態が債務超過でないこともプライム市場の条件です。また、流通株式時価総額100億円以上・流通株式比率35%以上などの多くの条件も達成する必要があります。
なお、プライム市場に上場を維持する基準は、新規上場の条件とほとんど変わりません。上場維持基準を保つには、長期にわたる企業努力や企業価値を維持向上させる工夫が必要です。
1-2.スタンダード市場
スタンダード市場は、東証の上場区分のうち中間に位置づけられる市場です。一定の時価総額を持ち、基本的なガバナンス水準を持つ企業を対象にした市場で、旧上場区分では東証二部やJASDAQ(スタンダード)からの移行が多く見られます。
スタンダード市場に上場するには、株主数400人以上・流通株式数2千単位以上が必要です。流通株式については、時価総額10億円以上・比率25%以上を達成しなければなりません。財政状況においても、連結純資産が正の状態を求められ、基準を達成できない場合は上場廃止となります。
1-3.グロース市場
グロース市場は、成長が期待できる新しい企業向けの市場です。現在の収益や財政状態よりも成長可能性に重きを置いたグロース市場は、投資者にとってリスクが大きい分、高いリターンが期待できます。旧上場区分に置き換えると、マザーズとJASDAQ(グロース)をまとめた市場がグロース市場にあたります。
グロース市場に上場する基準は、株主数150人以上・流通株式数1千単位以上・流通株式時価総額5億円以上・流通株式比率25%以上です。また、事業計画の合理的な策定や、成長可能性に関する事項の開示なども、上場の条件として設定されています。
グロース市場は、他の市場と比較すると条件が緩和されており、ベンチャー企業やスタートアップ企業が参入しやすい市場と言えます。
2.東証の旧上場区分とは?
東京証券取引所の市場区分は見直しが行われ、2022年4月から新しく3つの市場に分かれました。下記は、旧上場区分である東証一部・東証二部・JASDAQ・マザーズの詳細です。
- 東証一部
東証一部は、高い流動性と安定した利益基盤を持つ大企業を対象としており、旧区分では最も上位に位置する市場です。東証一部に上場するには、株主数800人以上・流通株式数2万単位以上・流通株式時価総額250億円以上・純資産50億円以上など、高水準をクリアする必要がありました。なお、上場を維持するための基準や市場変更する際の基準は、新規上場基準よりも緩和されています。 - 東証二部
東証二部は、一定の流動性があり安定した利益基盤を持つ企業が対象で、東証一部の下位に位置付けられた市場です。上場するには、株主数400人以上・流通株式数2千単位以上・流通株式時価総額10億円以上・連結純資産の額が正になるなどの条件を満たす必要があります。東証二部に上場するには安定した企業運営が求められますが、東証一部より上場しやすい基準です。 - JASDAQ
JASDAQは、成長性のある中小企業を対象にした市場で、スタンダードとグロースに分かれています。JASDAQスタンダードは、安定した実績を持つ企業を対象としており、東証二部と変わらない上場基準です。JASDAQグロースは、スタンダードと比較してより成長可能性の高い新興企業向けの市場で、スタンダードより緩和された上場基準です。 - 東証二部
東証二部は、一定の流動性があり安定した利益基盤を持つ企業が対象で、東証一部の下位に位置付けられた市場です。上場するには、株主数400人以上・流通株式数2千単位以上・流通株式時価総額10億円以上・連結純資産の額が正になるなどの条件を満たす必要があります。東証二部に上場するには安定した企業運営が求められますが、東証一部より上場しやすい基準です。 - 東証マザーズ
マザーズが対象にしているのは新興企業であり、成長可能性が重視される企業が上場できます。上場基準は、東証一部・二部よりも緩和されており、株主数150人以上・流通株式数1千単位以上・流通株式時価総額5億円以上などの要件です。マザーズは成長性を重視しているため、投資者にとって最もハイリスクハイリターンの市場と言えます。
3.上場する際の基準は?
プライム・スタンダード・グロースは、上場するための基準をそれぞれ設けています。以下は、上場基準について詳しくまとめた表です。
プライム | |
---|---|
株主数 | 800人以上 |
流通株式 | 2万単位以上 |
流通株式時価総額 | 100億円以上 |
時価総額 | 250億円以上 |
流通株式比率 | 35%以上 |
純資産の額 | 50億円以上、かつ単体純資産の額が負でない |
利益の額または売上高 | ・最近2年間の利益が25億円以上 ・最近1年間の売上高が100億円以上、かつ時価総額が1千億円以上見込み |
事業継続年数 | 3か年以前 |
スタンダード | |
---|---|
株主数 | 400人以上 |
流通株式 | 2千単位以上 |
流通株式時価総額 | 10億円以上 |
時価総額 | 項目なし |
流通株式比率 | 25%以上 |
純資産の額 | 連結純資産の額が正 |
利益の額または売上高 | 最近1年間の利益が1億円以上 |
事業継続年数 | 3か年以前 |
グロース | |
---|---|
株主数 | 150人以上 |
流通株式 | 1千単位以上 |
流通株式時価総額 | 5億円以上 |
時価総額 | 項目なし |
流通株式比率 | 25%以上 |
純資産の額 | 項目なし |
利益の額または売上高 | 項目なし |
事業継続年数 | 1か年以前 |
表の「流通株式時価総額」は、市場に流通している株式の価格で「流通株式数」×「株価」の計算式によって算定されます。「時価総額」は、「発行済み株式数」×「株価」で算定されるため、会社の役員などが保有している流動性が低い株式も含んでいます。時価総額は、大企業などを対象としたプライム市場のみ設けられている基準です。
上場基準は、プライム市場の要件が最も厳しく、スタンダード市場、グロース市場は緩和されています。どの市場区分に上場するかは、会社の規模と上場基準を照らし合わせて考えましょう。
3-1.企業が上場するメリットは?
企業が上場すると、企業活動の幅が広がり、規模の拡大や事業の基盤強化が期待できます。ここから解説するのは、上場企業ならではのメリットです。将来に向けて企業の発展を考えるなら、上場の検討が必要です。
- 資金調達がしやすくなる
企業が上場すると、発行した株式を投資家から直接買ってもらえ、資金調達しやすくなります。資本の増加によって、企業の財務基盤が安定し成長の加速が期待できるため、資金調達の方法を増やすことは重要です。 - 知名度が上がる
投資家や経営者は新規上場企業に注目しており、上場によって会社の知名度が上がります。認知度や社会的信用が高まると、企業同士の新たな連携が取れたり、銀行からの融資を受けやすくなったりするのも上場のメリットです。 - 社内体制が強化される
上場基準をクリアするにあたり、会社の運営方式や経営体制を整えなければなりません。上場の維持には一定の水準を保つ必要があるため、企業は盤石な組織運営体制を築けます。
まとめ
東証の上場区分はプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つに分かれており、それぞれ上場基準が異なります。ベンチャー企業やスタートアップ企業は上場基準が緩和されているグロース市場への上場を目指すなど、自社の規模や成長具合によって市場を選びます。
上場することで、資金調達がしやすくなったり、社内体制が整ったりするメリットがあります。企業の知名度を上げるためにも、基準を満たす場合は上場を検討してもよいでしょう。