コラム COLUMN
ストックオプション行使のタイミング|行使から株式売却までの流れも
ストックオプションとは、企業の役員・従業員が自社株をあらかじめ設定された価格で購入できる権利のことです。従業員や役員に高額な報酬を支払うことが難しいベンチャー企業などで、従業員や役員のモチベーションを高める手段として用いられています。
この記事では、ストックオプションを行使するタイミングや、取得した株式を売却するタイミングについて解説します。また、ストックオプションを行使する場合の注意点についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
目次
1.ストックオプションとは?
ストックオプションとは、企業の従業員または役員が、自社株を事前に決められた期日までに一定の価格で買える権利のことです。例えば、ストックオプションの行使価格が1株1,000円に決められているとき、実際の株価が10倍の10,000円に値上がりしても、1株1,000円で株式を取得できます。
ストックオプションを行使すれば、株価が値上がりしたタイミングで株式を取得できます。取得した株式は好きなタイミングで売却できるため、ストックオプションは従業員や役員にとって、上手に活用すれば大きな利益が得られる制度です。
一般的に、ストックオプションを行使するか否かの判断は、取得した従業員・役員それぞれに一任されています。取得した株式を売却するタイミングも個人の裁量に任されており、株価が上がらない場合や株式を手放したくない場合は、株式を保有したままでも構いません。
1-1.ストックオプションを行使するタイミング
ストックオプションを行使するのに適したタイミングは、自社の株価があらかじめ決められた権利行使価格を上回ったときです。例えば、自社株が1株1,000円のとき1株700円で買える権利を付与されていれば、300円分の差が利益になります。一方で、自社株が1株500円のとき1株700円で買うと200円分の損失が発生するので、権利行使できる金額より株価が低いときの権利行使はおすすめできません。
ストックオプションは、権利を行使できる期間内ならばいつでも自社株を買えるため、行使タイミングを見極めることが重要です。期限切れに注意し、期限間近までタイミングを待つのも方法の1つです。
1-2.ストックオプションの行使で得た株式を売却するタイミング
株式を売却するタイミングに取り決めはなく、株価がストックオプションを行使した価格よりも上昇したときに売り、売却益を得るのが一般的です。
ストックオプションを行使して取得した株式は、売却する期限を設けておらず、将来的な成長が見込まれる場合は希望する価格まで保有しておく方法もあります。一方で、株価は下落するリスクもあるため、売却価格が買付価格を下回る可能性も考慮に入れましょう。
2.ストックオプションの行使から株式売却までの流れ
ここから解説するのは、「ストックオプションの行使」から「株式売却」までの流れです。以下は、ストックオプションが付与されたときの手続き方法や、確認する点をまとめています。
【ストックオプションの行使から株式売却までの流れ】
- (1)ストックオプション口座の開設
- (2)ストックオプションの行使価額の払い込み・株式の購入
- (3)株式の発行処理
- (4)ストックオプション口座への株式の入庫
- (5)取得した株式の売却
- (6)売却価額の振り込み
信託銀行や証券会社に専用の口座を開設する対象は、税制適格ストックオプションのみです。税制適格ストックオプションでは税制面の優遇があるため、分別管理を行う必要があります。有償ストックオプションや税制非適格ストックオプションを採用している場合は、上記(2)の流れからスタートします。行使するストックオプションの種類を確認したいときは、会社に問い合わせましょう。
口座の開設など準備ができたら、ストックオプションの権利を行使できます。会社に「ストックオプションで株式を買う」ことを伝え、指定された口座に費用を振り込みましょう。株式の発行は信託銀行や証券会社を通じて行われ、口座で保管されます。
上記(4)の「入庫」とは、信託銀行や証券会社が株式を保管することを指し、保有している株式は好きなタイミングで売却可能です。株式を売却したいときは、信託銀行や証券会社のサイトを利用し申し込みます。
3.ストックオプションを行使する場合の注意点4つ
ストックオプションを行使するにはいくつかの条件や考慮する点があり、確認ミスによって権利が行使できなくなる可能性があります。ここからは、ストックオプションを行使する場合の注意点について解説します。付与された権利を失効しないよう、注意点をよく確認しましょう。
3-1.期間内に行使する
ストックオプションは、一定期間内に行使しなければ、権利を失います。税制適格ストックオプションの場合、権利行使期間は「付与決議日後2年を経過した日から10年を経過する日まで」となっています。ストックオプションを付与されてからすぐに権利を行使できるわけではないので、注意が必要です。
引用:経済産業省「ストックオプション税制」引用日2023/06/07
また、会社によっては、ストックオプションの行使に関して独自の条件を設けているケースもあります。ストックオプションの行使によるメリットを活用するためには、期間や条件を十分に確認しましょう。
3-2.失効条件を確認する
ストックオプションを行使するにはいくつかの条件があり、条件を満たせないとき、権利を失います。まず、ストックオプションはあらかじめ行使できる期間を設けているため、期限日を過ぎると権利が消失します。なお、期間内であっても、退職者は権利を行使できないと定めている会社が多いです。
また、会社によっては業績の達成を権利行使の条件にしており、一定の業績が達成されないときストックオプションは失効します。ストックオプションの行使条件や失効条件は、会社によって異なるので、詳しく知りたい場合は勤務先に確認しましょう。
3-3.利益が出ない場合がある
株価は景気や会社の業績に影響されて変動するため、権利を行使しても利益が出ない可能性があります。不景気のあおりを受け、市場全体の株価が低迷しているときは、利益が出にくいです。また、好景気であっても自社の業績が伸び悩んでいると、株価は思ったよりも上がりません。
株式で利益を得るには、買値よりも高い価格で売ることが基本であり、利益を出すためには、投資の知識や市場の流れを読む力が必要になります。ストックオプションを行使しても利益が出ない場合があることを念頭に置き、取引のタイミングを考えることが大切です。
3-4.税金を考慮する
ストックオプションには、権利を行使するときに課税されるタイプと、株式を売却するときに課税されるタイプがあります。
まずストックオプションは、有償と無償に分かれ、さらに無償ストックオプションは税制適格と税制非適格に分類でき、それぞれのタイプで課税タイミングが異なります。有償ストックオプションと税制適格ストックオプションにかかる税金は、「株式売却時のみ」です。一方で税制非適格ストックオプションは、「権利の行使時」と「株式の売却時」に課税されます。
いずれの種類のストックオプションも、株式を売却するときに利益が出た場合は所得とみなされ、税金がかかる仕組みです。利益を受け取る際の方式や他の所得の状況によっては、確定申告が必要になるケースもあります。
まとめ
ストックオプションを上手に行使することで、大きな利益を得ることができます。ストックオプションの行使価格を自社の株価が上回るタイミングで、ストックオプションを行使しましょう。取得した株式は、そのまま持ち続けても問題ありませんが、株価が高いタイミングで売却することにより、大きな売却益が得られるでしょう。ただし、株式の売却で利益を得た場合は、税金の申告が必要となります。
ストックオプションの行使に関して疑問・不安がある場合は、金融商品や財務の専門家に相談しましょう。